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Prologue(1)

Now unny,now howers00(1) ドリーム小説 今思い出せば、悲しいよりも悔しかったの。

あの時、何も出来ずにただ怯えて泣いていただけの幼い自分が。
幼い頃から抱き続けた夢を叶えられそうに無い自分自身が。


あの日は、年に一度の家族旅行の一日目で…車で草原を移動中だった。
夏特有の暑いけれども乾燥した風に、青い澄んだ空がとても綺麗だったのを覚えている。
母と談笑していた父が突然急ブレーキを踏み、姉と私が前につんのめってしまった。

「なっ!?モンスター!?逃げろっ!」

直後に聞こえた父の叫び声、母の悲鳴、車体を覆う程の大きな影を見ながら、姉に手を引かれ車を降りたのは覚えている。
でもその後の事はよくわからない。
泣きながら必死で走ったから。
気が付けば姉は居らず一人ぼっち。
近くの街へ向かうトラックが通りかからなければ野垂れ死んでいたかもしれない。


、お父さんとお母さん、お姉ちゃんはモンスターに襲われて…亡くなってしまったのよ」

数日後に憔悴しきった祖母がそう教えられた時、悲しいよりも生き残ってしまった事に泣いた。
部屋に閉じこもり、食事もろくに食べようとしない私に、祖母が手渡したのは一冊の絵本。
絵本に描かれていたのは100年程前に世界を救った“英雄”の話だった。お伽話のように聞かされていた彼は幼い私の目には光り輝いて見えて。確かにあの時、生きる希望と勇気を与えてもらえたのだ。
それからというもの、少しでも彼に近付きたくて弱かった自分を変えたくて心配する祖父母を説得して、10歳になってすぐに兵士養成学校バラムガーデンに入学した。
“英雄”が育った場所に行ければ自分もきっと強くなれる。
SeeDになって私みたいな子を、困っている人を救うんだって。
…なぁんてね、所詮は幼子の夢だったのかもしれない。
現実はそう甘くは無いのにね。






「あーぁまた落ちちゃった…」

バラムガーデン内にあるカフェは、メニューの値段も味も良いうえに室内は外からの光を取り入れた造りとなっているため、明るく開放的な生徒達の憩いの空間となっている。ただし、ある一角を除いて。
一見したら二人の女子生徒が円形のテーブルを囲み談話しているのだが、重苦しい空気が片方の女生徒の周りだけ漂っていた。


「はぁ〜〜」

慰めてくれる友人には申し訳ないと思いつつも、女生徒、は盛大な溜め息を吐いた。
ぐしゃぐしゃと頭を掻くと、せっかく時間をかけて寝癖を直した髪も買ったばかりの服も乱れるが気にしてはいられない。
今度こそは!と気合いを入れて臨んだSeeD試験だったから、今までで一番ショックだった。
周りに他の生徒も居るというのに一目もはばからずつい大きな声を出してしまっても仕方がないと勝手に思い、二度溜め息を吐く。



「まぁ、まだチャンスが残って無いわけじゃないんだしさ気を落とさないでよ」

「まだまだ頑張ろうっても思いつつこれで何度目?流石に落ち込むよ〜」

気を使って慰めてくれる優しい友人の言葉は今は悲しく胸に響くだけ。
何度見直しても手に持つ紙に書かれている文字は変化せず、無情にも“不合格”とシンプルだが精神的ダメージが大きい意味を知らしている。
ガーデンのエリートであるSeeD試験を受験資格を得た15歳から受け続け、不合格になるのは今回で何回目か。こうも落ち続けたら自分にはもう才能が無いだろうことは流石に悟ってきた。
SeeD試験への受験資格は20歳まで。現在自分の年齢は18、あと一年半で20歳になる。そうしたらSeeDになれる資格はおろかこのガーデンを良ければ卒業、成績が悪ければ退学処分ということになってしまう。


「ハッ!お前またSeed資格落ちたんだってなぁ。そろそろ学園長から自主退学を勧められるんじゃないか?」

人を小馬鹿にしたような意地の悪い笑みを浮かべながら、ワックスとスプレーを駆使して髪をセットして服を着崩した如何にもチャライ印象を与える男の姿を前方に見つけ、の思いっきり嫌そうに歪む。


「カール…」

元々彼とは仲が良くなかったが、自分がSeeD試験に合格したからというもの何かとに絡んでくるようになったのだ。
普段ならこんなヤツは言い返してこてんぱんにしてやっていたのだが、今回ばかりは言い返す元気は無い。
筆記試験は合格出来たのに実技試験での不合格という結果に大きな精神的ダメージを負っていたのもあるし、それに、彼の言っている事は正にその通りだったからだ。


「ちょっと!カール!あんたみたいな空気の読めないヤツを最低男って言うのよ!!」

「いいよリナ、本当の事だもの」

「ちょっ何言ってるのよ、?」

突然ポロポロとの瞳から溢れ落ちた涙に、リナと勝ち誇った笑みを浮かべていたカール慌て出す。

「おいおい、これじゃ俺が泣かせたみたいじゃんか、お前どうしたんだよ」

「カール!あんたのせいだからね!」

「ごめん、ね…私、戻るね」


一度溢れ出した涙はなかなか止まってくれそうになく、戸惑う二人をその場に置いて逃げるようには宿舎へ戻って行った。

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