薄暗い重厚な石造りの部屋に、白いローブを身に纏った二人の男と女が不思議な色の水が入った大きな水盆を囲むように立っていた。
女がその細腕に抱えるのは布にくるまれた生まれて間もないであろう赤子。
“忌まわしき子”
“しかし、この赤子は希望の光となるやもしれぬ”
赤子に鋭い視線を送る男達をよそに、女の腕の中で赤子は穏やかに眠っている。
“もう一人は兎も角、この子は赦されない存在なのだ。さあ、躊躇うな”
男に促されるままに女は震える腕を伸ばすと、赤子を七色の水が渦巻く水盆に投げ入れた。
“世界があなたを必要とするまでー…”
* * * * *
ピピピピ…!
「…ん?」
耳元で携帯電話のアラーム音が聞こえ、の意識がゆっくりと浮上する。
高校受験前の大事な期末試験の勉強をしていたのに、いつの間にか寝てしまったらしい。
勉強しながら机に突っ伏して寝ていたのか体中が痛いし何だかうまく動かせない。
胸が何かに圧迫されているみたいで息苦しいし、冷たい風が体の体温を奪っていって寒くて堪らない。
…冷たい風?
「えっ!?」
そこで一気に覚醒する。
目の前に広がるのは何の光も無い真っ暗な闇の世界だった。
足が地に着いていないような浮遊感を感じて、おそるおそる下を向けば真っ黒な荒れた海面と自分以外の腕。
背中に固いものが当たっているし、今の状況は…脇の下から何者かの腕がを抱えて空を飛んでいたのだ。
「ちっ目覚めたか」
頭の上から聞こえた甲高い声に顔を上げて、の目はこれでもかという程大きく見開かれる。
「きゃあああ!?」
を抱えていたのは、鳥の頭をして背中に羽の生えた大柄な人間だったのだ。
「いやっ!離して!!お、お化け〜!!」
混乱した状態で鳥男の腕から逃れようと手足をばたつかせて暴れるに、鳥男は舌打ちし腕の力を強める。
「っ、暴れるな。五月蝿い娘だ!まだしばらく寝てろっ!」
鳥男が何事かを呟くと、急激な眠気に襲われて抗うことも出来ずに瞼が閉じてしまう。
(なに、これ?怖いよぉお母さん…)
どうしてこんな状況になっているのか意味がわからないまま、の意識は再び闇に沈んでいった。
…To be continued.