店を出た後に、口直しにとイルミに買って貰ったチョコレートのバニラソフトクリームが溶けかかっていることに気づかず、広場のベンチに座り呆けているをイルミは覗き込む。
「あの二人の事、気になるの?」
「気になるというか…彼女さんに悪い事したなぁと思って…」
指にソフトクリームが垂れてきて、あたあたと指に垂れたクリームを舐める。
ハンカチを渡しながらイルミはの横に腰を下ろした。
「ダーニャはクロロの彼女ではないよ。確かセフレじゃなかったかな?」
「セッ…?」
その言葉を以前は友人から聞いたことがあるような気がするが、何だったのだろう?
首を傾げるにイルミは軽く溜息を吐く。
「セックスだけの、恋愛感情抜きの身体だけの関係ってこと。たしか、今クロロには特定の彼女は居ないと思ったよ。セフレや仕事上の付き合いは多いみたいだけど」
「身体だけって…」
それは、付き合っていないのに友達でも無いのにチョメチョメなことをする相手…そんな相手が多いだなんて…軽く目眩がしてきた。
(でもクロロさんって、やっぱり女タラシだったんだ)
出会った当初に彼に対して働いた直感は当たっていたと言うことか。
最近はそんな事、兄のような存在になっていたため忘れていたが。
「は本当に素直で面白い反応をするね」
うなだれるの頭にポンッとイルミの手が置かれた。
そのまま指が頬を滑ると、顎を掴み上を向かせる。
「ねぇ、冗談じゃなくって俺の彼女にならない?」
「…えっ?」
「俺と付き合わない?」
瞬間、思考が止まった。
目を見開いて、呼吸をすら忘れて綺麗な切れ長の瞳を見つめていた。
冗談かと笑い飛ばそうかと思ったが、イルミの瞳に戯れの色は無い。
本当なら、ただの高校生だった頃の自分なら飛び上がる程嬉しかっただろう。
イルミの事は嫌いじゃ無いし、好き…だと思う。
でもこの好きはLoveとは違う、自分にはまだLoveとはわからない。
「駄目」
顎と頬に触れるイルミの手に自分の手のひらを重ねる。
端から見たら恋人同士の甘い戯れに見えるだろう。
「そんな簡単に言っちゃ、駄目だよ」
息がかかるくらい近く、口付ける事も出来るくらい近い距離で顔を赤らめながらは真剣な顔で言う。
「付き合うって、そんな簡単な事じゃないと思うもん。男女がお互いのことをよく知って、好きになって付き合うんだから…あたしイルミの事あまり知らないし、イルミだってあたしの事をよく知らないでしょ?それにまだ“友達”にもなっていないし」
「…ってさ、本当に面白い言動をするよね」
だいたいの場合は、友達関係をすっとばして彼氏彼女の関係になることが多いというのに。
このまま力ずくで彼女を奪ってもいいけれど…今はまだ“友達”でもいいか。
頬を一撫でして、イルミはから手を離した。
「それに…」
撫でられた頬に手を当ててイルミに聞こえないようには呟く。
― それに、また置いて逝かれたら…今度こそ、私は…
私は、本当に壊れてしまうから…―
突然、頭の中に浮かんだ自分でもよくわからない思いに困惑してしまう。
困惑と動揺を打ち消すように、ソフトクリームにかぶりついた。
…To be continued.