03

そしてついにその日がやってくる。
運命が動き出す鍵となる“彼女”がの前に連れてこられたのだ。



「新入りだ!」


兵士に連れてこられたのは、マリアという名のとても奴隷に見えない綺麗な女の子だった。
多分、も連れてこられ当初は奴隷には見えなかっただろうが、美しい金髪にきめの細かい白い肌には汚れた布地の奴隷服は不釣合いに見えた。
彼女は元々奴隷ではなく光の教団の信者だったらしい。
教祖が大事にしているお皿を不注意で割ってしまい、それを咎められて奴隷にされたという。


「お皿を割っただけで女の子を奴隷にするなんて、頭おかしいんじゃない!?とんだカルト集団ね!」

「いいんです。最近少し教祖様のお考えがわからなくなっていましたし…わたくし…こんなに大勢の人々が働かされているなんて、全然知りませんでしたわ……」

俯くマリアにヘンリーが大きく息を吐いた。

「当然さ。表向きは光の教団が世界を救う、とかなんとか言ってるらしいからな。でもさ、こんなに奴隷を使ってこんな場所に神殿造って信者から金を巻き上げて何が世界を救う、だ」

彼の言葉にリュカとも頷いた。


「でも、たいていの信者はそんな事実を知りませんわ…。わたくしだって、今の状況が無ければ教団の裏側なんて、分からなかったですもの」

ついにマリアは両手で顔を覆ってしまった。

泣き出したマリアに、慌てるヘンリーとリュカをよそには思考を巡らす。

「光の教団か…」

確か、光の教団の幹部や教祖は魔物だったはずだ。リュカの父親を殺したゲマもその一味だった気がする。
此処を脱出して、そして数年後、物語の終盤に彼はこの場に二度戻る…
奴隷になった人達を助けるため。教祖や魔物を倒すため。

…あれ?もっと重要な事のためだった気がする。


、どうした?」

「あ…何でもないよ」

リュカに声をかけられて、あまり深く考えるのは止めた。
きっとそのうちに思い出すだろうから。











* * * *










マリアとは一見正反対な性格だったがお互いにそのことが楽しく思えて、また年が近いということもあり直ぐに打ち解けた。
まだ奴隷として新人のマリアをがフォローして心が折れそうになる彼女を助けていた。

そんなある日ー…




「きゃああ!」

石を積み上げる作業を終えて、水を飲んで一息ついていたの耳に女性の悲鳴が届いた。
誰か鞭男の機嫌を損ねて鞭で叩かれているのか。
怒声と鞭の音と悲鳴はいつものこと。
そうだったがの顔色が変わった。
その声に聞き覚えがあったのだ。


(まさかマリア!?)






「俺の足に石を落とすなんていい度胸してやがる。確かお前は新入りだったな。いい機会だからお前に奴隷としての躾をしてやる!」

鞭男が鞭を打ち付ける度にマリアの白い肌が赤く腫れ上がっていく。

声のする方へ走っていくと、ぐったりと倒れるマリアの綺麗な髪を鞭男が片手で掴んで無理矢理立たせようとしたのを目にして、の中で何かが切れた。


「あいつ…!許せない!」

自分たちに被害が及ぶのを恐れて止めることをしない傍観者達を掻き分けて、は怒りの形相で鞭男の前へ飛び出した。







…To be continued.