「止めなさいよ!!デブ野郎が!!」
「またお前か!この鞭で叩かれるのが好きなようだな!」
ニヤニヤと厭らしい笑いを浮かべながら鞭男はマリアを離すと、に向かって鞭を振り下ろした。
バチィ!
「なっ!?」
だが、鞭が体に当たる事はなかった。
体に当たる瞬間、はしなる鞭を片手で受け止める。
「離せこのっ!」
鞭男が力を込めて引っ張る度に、鞭を掴んでいる手のひらの皮が破れ血が滴り落ちる。
焼き尽くような痛みがの腕に走るがそんなもの関係無い。
ぎりっと唇をきつく噛むと両足で踏ん張る。
「あんたも、少しは奴隷の痛みをわかりな!!」
焦って鞭を引っ張り続ける鞭男に向かって片手を突き出した。
「ベギラマ!!」
力ある言葉とともに激しい炎が手のひらから放出される。
「ぎゃあぁ!?」
灼熱の炎に曲がれて鞭男は地面を転げ回る。
傍観していた奴隷達も魔法の炎にさすがに叫び声を上げ逃げ出す。
騒ぎに気付いた他の鞭男達も集まり出した。
その騒ぎは、少し離れた場所で作業していたリュカとヘンリーの耳にも届いた。
「なんだ?って!?おいリュカあれは!!」
「!?」
鞭男達と戦っているの姿を確認するや否や二人は走り出していた。
* * * *
「いたたたた…」
素手で鞭を握ったため皮が裂けてしまった手のひらを見て、リュカは思いっきり眉を寄せた。
「は無茶苦茶なんだよ鞭を素手で受け止めるなんて!一応君は女の子なんだよ!」
「ごめんなさい…」
回復呪文をかけながらリュカが珍しく怒っているのがわかりは素直に謝る。
マリアが傷付けられ、完璧に頭に血が上ったは鞭男数人と戦った。
途中で戦闘に加わったリュカとヘンリーで鞭男をのしたのだが、騒ぎを聞きつけてやって来た兵士達によって達三人は懲罰房へ入れられてしまった。ただマリアは怪我を負っている、ということで兵士に連れて行かれたという。
「マリア大丈夫かな?それにさ、このまま俺達、処刑されちまうのかな」
半ば諦めてモードのヘンリーは大きな溜め息を吐いた。
「…大丈夫。きっと大丈夫だから」
確信があった。
頭に血が上ってちょっと派手にやりすぎたかもしれないが、これで彼等は此処から脱出出来る。
ようやく彼等の物語は動き出しのだから。
しばらくして離れた場所からこちらへ向かって来る足音が聞こえて、は笑みを浮かべた。
…To be continued.