小高い丘の上に出ると、リュカは駆け出していた。
「あ、ちょっとリュカ!?」
「おいっ!?」
置いていかれた形になったとヘンリーは急いでリュカの後を追う。
「そんな…!?」
サンタローズの村の入り口で故郷の荒れ果てた姿を目の当たりにし、リュカは言葉を無くして立ちすくんでいた。
「ひどい…これが、サンタローズの村、なのか…!?」
ヘンリーも信じられないといった様子で呟く。
サンタローズの村を歩いていると生き延びた人に出会うことが出来た。
「まさか、まさかパパスさんの息子のリュカなのか!?」
今にも泣きそうな顔で老人は10年前、この村に起こった話を話し始める。
「そんな、嘘だろ…!?これをラインハットが…親父が命じたって言うのかよ!?」
動揺してかヘンリーの声は叫び声に近くなっていた。
老人の話によると、10年前ヘンリー王子誘拐の咎を理由として、パパス討つべし、とヘンリーの継母であるラインハット王妃の命で兵がサンタローズの村を襲ってきたのだという。
「ひどい…」
キリッと、は唇を噛む。
ゲームの流れで村がこうなっていることは知っていた。
しかし、ゲームの画面越しと現実に見るのでは感じ方は違う。
世の中にはいろんな人間がいると思うが、私利私欲のためにここまでやるとは…ラインハット王妃はどうしようもないくらい自己中心的で憎々しい女だ。
リュカとヘンリーの後ろにいるためには彼等の顔を伺い知ることは出来ないが、きっと自分と同じような表情をしているだろう。
ぼんやりと視界が歪んでいく。
踏み荒らされた上に火を放たれたのだろうか、草木すらまばらな畑は土の色も黒く変色してしまい、あと数年は豊かな作物の収穫は難しいだろう。
家々も見る影もなく打ち壊されて、いたるところに汚染されて毒々しい色をした水溜りすら出来てしまっている。
「…ごめん。俺のせいでこんな事になって…」
「どうしてヘンリーが謝るんだ?ヘンリーは何もしていないし、何も悪くないよ」
今にも泣き出しそうな顔をして謝るヘンリーに、リュカはこの場にそぐわない落ち着いた声で言う。
大好きだった父親も幼い頃育った村も失って、きっと一番泣きたいのは彼のはずなのに。
いつもそうだ。
いつもリュカは周りを安心させるために笑顔を見せる。
涙ではなく安心させるために笑顔を見せる、自分より周りを気遣う、自分より周りを気遣う本当に彼は優しいと心底思う。
でも、その反面馬鹿だとも思う。
泣いてくれた方が良かった。だって泣くのを堪えて笑う彼の表情はとても切なく見えたから。
「?」
「お、おい何でが泣くんだよっ」
「だって、だって…こんなのひどいよっ」
ポロポロ涙を流して泣くの頭をリュカがゆっくりと撫でる。
「…グータフさん、薬師さんの家だった洞窟に誰か住んでいるみたいだって。もしかしたら俺の知っている人かもしれないから挨拶しに行こう」
幼子を諭すように言われてはコクリと頷いた。
…To be continued.