09

元グータフさんのお家を掘り広げて増築し、寄り添いながら逞しく生き抜いていた。
リュカの幼い頃を知っている神父さんたちと宿屋のご夫婦にご挨拶をして、三人が次に向かったのはサンタローズの村を流れる川の上流にある洞窟。
10年前のラインハットへ向かう前日にパパスが何かを隠しに洞窟へ行った、という情報を老人から得たからだ。


湿気を帯びて黴臭い人生初の洞窟探検は奴隷生活を思い起こさせて気持ち悪くて堪らなかくて、一人じゃなくて本当に良かったと思う。


「ぷるぷる、大丈夫?」

「ありがとうねスラリン」

頭を撫でるとスラリンはぷるぷる体を揺らして喜ぶ。

襲ってくるモンスターと戦いつつ一向は先を急ぐ。
足がそろそろ痛み出した頃、人工的に造られた階段を発見した。
階段を降りた先には、その空間を明らかに人が使っていた痕跡、こじんまりとした本棚と机と椅子が残っていた。
本棚には湿気をたっぷり含んだ本が朽ちずに数冊残っていたが、湿気によりインクが滲んでいてほとんど読めなかったのだが、かろうじてわかったのは“天空城”“伝説の勇者”について。
更に、部屋の一番奥には1本の剣が地面に突き刺さっていた。
剣の柄に不思議な紋様が刻まれたこの剣は、ゲーム画面や攻略本で何度も見たことがある。
“天空の剣”天空の血を引く勇者しか扱えない伝説の武器。
剣の周りは洞窟中の湿っぽい空気とは異なり、とても清らかな空気が漂っているとには思えた。



「これは…親父の字?」

机の引き出しの中から紙の束を見付けたリュカが、震える指先で手紙を留めていた紐を解く。
引き出しの中に入っていたため手紙の状態は良く、筆跡から父親のものだと直ぐにわかった。


『リュカよ。お前たちがこの手紙を読んでいるということは、何らかの理由で私はお前の傍にいないのだろうな』

手紙を読むリュカの声は、とても優しくて耳に心地良く響く。


『既に知っているかもしれんが、私は邪悪な手にさらわれた妻マーサを救い出す為、まだ小さいお前たちを連れ旅に出た。
マーサにはとても不思議な力があった。私にはよく分からぬが、それは魔界でも通じる能力らしい。たぶん奴らはその能力ゆえに、マーサを魔界に連れ去ったのだろう。
そこでリュカ、まだ旅が終わっていないなら、私の代わりにマーサを救い出してほしいのだ。
そしてその為に、伝説の勇者を探せ。
私の調べた限りでは、魔界に入り邪悪な手から妻を取り戻せるのは…伝説の天空の武器防具を身につけた勇者だけなのだ。
私は世界中を旅して、天空の剣を見つけることができた。しかし未だ伝説の勇者は見つからぬ…
リュカよ!どうか残りの防具と伝説の勇者を見つけ出し、妻マーサを邪悪な手から救い出して欲しいのだ。
私はお前を信じている。頼んだぞ、リュカ!』


そこまで読むと、リュカは目を手で押さえる。

出会ってから初めて見る彼の姿に、気が付かないうちにの頬を涙が伝っていた。







…To be continued.