母親を助け出すために、世界を危機から救うためには、天空の武具を集めて勇者を探し出さねばならない。
ゲーム中ではそこまで重く考えて無かったのだけど、実際にパパスの手紙を目の当たりにした今はとんでもない事を息子に託したんだな、とは感じていた。
突然、父の旅の目的を知って大丈夫かと見れば、リュカは少し青ざめつつも視線に気付いてに微笑み返す。
悲しげな、しかし揺るがない強さを持った微笑み何故か胸が痛くなった。
「これが天空の剣か…」
リュカが地面に刺さっていた天空の剣を引き抜き、鞘から出そうとしてみたが引き抜く事は出来なかった。
次にヘンリーが挑戦するが、やはり彼の力では引き抜くことは出来きずに剣を持ち上げるだけで精一杯。
「二人でも駄目なら無理だと思うけど…」
苦笑いを浮かべながら最後にが天空の剣に手を伸ばす。
この世界にとって、イレギュラーな存在の自分が扱えるなんて思ってはいない。
ヘンリーが苦労して持ち上げていたから、そうとう重いだろう覚悟して剣を持つが…思いの外剣は軽かった。
「えっ…?」
柄に手をかけて引き抜けばあっさりと鞘から抜けてしまう。
「!?」
「はぁ?まさかが伝説の勇者かよ!?」
「うそ、何で…?」
予想外の展開に驚きの声が上がる。
物語と違う展開に天空の剣を手にしたまま、は混乱していた。
「何で?私は勇者じゃないのに。私は此処にいちゃいけないはずなのに…」
混乱した状態のまま天空の剣を見ると、鉄とも銀とも異なる不思議な光を放つ刀身が徐々に輝き増していく。
「…?」
誰かが自分を呼んだ気がした。
誰かは分からないけれども懐かしい声。
ずっと昔から知っている気がする声。
「あなたは…誰?」
呟いた瞬間、剣から放たれた光と共にの意識は一気に遠くなっていった。
邪悪な雰囲気を放つダンジョンで光輝く天空の剣を手にモンスターと戦う少年がいた。
珍しい緑色の髪に青い瞳をした凛々しい顔立ちの少年。
頭には変わった形のサークレット、天空の剣に似た材質の鎧と盾を装備している。
(天空の武具?誰だろうか。でもすごく懐かしい、気がする)
初めて見た相手なのに、彼からはずっと知っているような懐かしさを感じた。
じっと少年を見詰めていると、戦闘を終えた少年が不意に振り向きと目が合う。
少年はひどく驚いた表情でを見詰めるが、戸惑いつつも彼の表情が嬉しそうな笑みへと変化する。そして、唇が動く。
『 』
(私、知ってる…)
何故彼は嬉しそうなのか、何故自分の名前を知っているのか、そんな事より目が合った瞬間に確信した。
確かに自分はこの少年を知っている、と。
* * * *
「…!?」
天空の剣を手にして魅入られたように刀身を見詰めたまま動かないに、さすがに様子がおかしいと感じてリュカは彼女の肩を掴んで揺さぶる。
色を無くしていたの眼の焦点が、ゆっくりと戻っていく。
「リュカ…?わっ!」
我に返った途端に天空の剣が重みを増し、重さに耐えきれずには剣を下ろした。
「あれ…?急に重たくなっちゃった。やっぱり駄目みたい、って!?」
目の前にリュカの顔があり肩を掴まれていると自覚した瞬間、一気に頬が熱を持つ。
「気が付いた?」
「はー、まさかが勇者様なのかってびっくりしたよ」
二人から安堵されて、は何だか複雑な気分になった。
…To be continued.