「俺さ、ラインハットに行ってみようかと思うんだ」
そう言ったヘンリーの表情は覚悟を決めた、真剣そのもので。
リュカもも彼を止める理由などあるはずもなく、力強く頷いた。
ラインハットの城下町にやって来た一行は情報を集めるために街を散策したが、戦争が始まるかもしれないという不安と何処からかならず者達集まってきて治安が悪くなっているため、人々の表情は暗い。
とりあえず王に即位したヘンリーの異母兄弟のデールに話を聞こうとしたが、城に入ろうとしても兵士に追い払われてしまう。
無理矢理押し入ろうとするヘンリーを宥めての提案で、城の隠し通路を探すことにした。
その後、城の外堀水路の先に隠された通路を発見し、そこから城内に侵入することに成功した。
「城の中にこんな場所があったなんて知らなかったな…」
「そりゃ王子様が城の裏側なんて知らないよね」
華やかな城の裏側、薄暗くモンスターまで住み着いているような汚い場所はおそらくほとんどの者は知らないはずだ。王族のヘンリーが知らなくても仕方ないというもの。
黴臭い通路を進み、地下牢のような場所に出た時、何者かの叫び声で一行は足を止めた。
「妾はこの国の皇后ぞ!」
「はぁ?」
地下牢に入れられていたのは、かつては豪奢だったろう汚れたドレスを纏ったボサボサの髪の女性。ヘンリーによれば、喚き立てる女性は確かに幼い自分を罠にかけた皇后の面影があるという。
この自称、皇后の話では魔物が自分に取って代わってやりたい放題しているという。
場内に侵入したリュカたちは現王のデールに会い、城内にある旅の扉を使い真実の姿を映し出す“ラーの鏡”が安置されている塔へと向かい、修道女マリアの協力を得、真実を映すラーの鏡を手に入れることに成功した。
しかし…
「すみません兄上、少しでも兄上の手伝いを出来たらと思ったのですが…」
デールが地下牢から皇后を連れ出したため、二人の皇后が取っ組み合いの喧嘩を始めてしまったのだ。
引き剥がしたいのだが、どっちが本当の皇后かわからない。
「じゃあ、このラーの鏡を使えば…」
リュカが手にしたラーの鏡が光を放ち、鏡に真実の姿が映し出される。
「おのれ〜もう少しでこの国を乗っ取る事が出来たのにっ!!」
姿を表した偽皇后が襲いかかってきたため、戦いが始まった。
* * * *
偽皇后との戦いは最初は苦戦したものの、ラインハット兵の加勢もあり徐々にこちらの優勢になっていき、ヘンリーの止めの一撃が決まり勝利する。
そして、ラインハットの国は無事に平和な王国へと戻り、王子であるヘンリーは弟のデールを補佐するため、戦線離脱することになった。
「悪いなリュカ、最後まで付き合えなくてさ」
「俺は自分の目的のために旅を続けるんだ。ヘンリーの役目は、王を、国を立派に支えることだから、謝る事なんて無いよ」
「そうだよ、立派な王子様をしてね。それに生きていれば、また会えるもの」
彼との別れは仕方がないことだと分かっていたこと。
親友のリュカも内心は寂しいはずなのに、そんな素振りは見せない。
は寂しくとも、せめて泣かないように唇を噛んで堪えた。
…To be continued.