程良くアルコールも入り居酒屋で盛り上がる若者達。
親睦会という名の合コンの雰囲気にいまいち彼等に馴染めず、は一人浮かない表情を浮かべていた。
(もぉ帰りたいなぁ)
溜め息を吐くのは本日何度目だろうか。
「急にキャンセルされちゃって女の子が一人足りないのよ。だからさご飯を楽しむつもりで、お願いっ」と友人に頼まれて渋々了承したのは自分だけど、はっきり言って親しい友人だけの女子会なら兎も角、男女の出会い目的の飲み会はどうにも好きになれない。
何だか知らないけど盛り上がっていちゃついている男女を見ると、もう勝手にやってくれ、と思う。
服装こそはワンピースとブーツで少しばかり女の子っぽくしてみたが、直してもらった眼鏡をかけて普段と変わらないナチュラルメイクの時点で、は最初からやる気は0。
(風間さん、ちゃんとご飯食べているかな…)
甘いカクテルが入ったグラスを両手で持ちながら、気が付けば居候の事ばかり考えてしまっていた。
「男性陣の中で一番のイケメンよ!」と友人が騒いでいた、学部が違うバンドをやってると言っていた金髪の男の子が、どことなく居候に似ているからだろう。
(また一人で出歩いてトラブルになってなければいいけど…)
一人で夜のコンビニに出掛けた時は、目つきが気に入らなかったとかいう理由でたまっていたヤンキー達をボコボコにしちゃったのだ。
怪我させることはあってもすることは無いだろうけど、トラブルだけは起こさないでこほしい。
こまで気にするのは、恋慕かと一瞬勘違いしそうになるが、これは恋慕とは絶対に違う。
名前を付けるのなら…保護者の気分?
「あのさ、さっきから目が合うよね」
思考にふけっていた時、かけられた声に顔を上げると、横には友人がかっこいいと騒いでいた金髪のイケメンが座っていた。
「…え、と、そうですか?」
意識が違う方向に行っていたからといっとも、声をかけられるまで気が付かなかったとは。
語尾が疑問系になりつつ、は慌てて笑みを作った。
「さっきから一人で飲んでいるけど、楽しんでいる?」
楽しくない、何て言いたいけど言えない。
「あ、いや、お酒もご飯も美味しいし、それなりに楽しいから大丈夫です」
一人でいるに対する物珍しさからか、一人でいる寂しそうな女への気遣いというものか。
どっちでもいいから立ち去ってほしい。
だってさ、さっきまで彼と楽しくお話していた女の子達が凄い顔してこっちを見ているのですが…
「いやいや、一人で飲んでいるより色々話した方が楽しいよ。あ、今更だけど隣いいかな?」
「…うん」
親しい男性以外の男性に免疫があまり無いためか、雰囲気と印象は異なるが居候に何となく顔立ちが似た相手だったため、つい反射的に頷いてしまった。