これからのことを想像しているのか、男たちは楽しそうに笑い声を上げていた。
一見すれば遊び帰りの若者が公園で酔いを醒ましているといったところだが、彼等に拉致されたらに待っているのは絶望しか無い。
ケンは未だ眠ったままのの顎を掴んで上向かせる。
先日、彼女であるユリに八つ当たりされた鬱憤を晴らせる上に久々に楽しめそうだと口元を歪めた。例えこの先この女が自分たちを訴えるだの騒ぎ立てても、いつものように親やユリの父親に揉み消してもらえばいい。
その時、
「…貴様等、その女をどこに連れて行く気だ?」
何の気配も無かった暗闇から突然響いた男の声に、弾かれたように彼等は一斉に振り向いた。
「何だテメェ?」
突然現れた、金髪の男を睨み付けて威嚇する革ジャンの男をケンが止める。
人通りがほとんど無い場所とはいえ、街中で騒ぎを起こせば通報されかねない。
「飲んでいて酔いつぶれたこの子を介抱していたんだ。今から自宅まで送るんだよ」
対する男、風間は彼等に肩を抱えられたに視線を移して状態を確認すると眉間に皺を寄せる。
「この女は多少の酒ではたいして酔わない底無しだ。それがこの有り様だということは…貴様等、酒に薬でも盛ったか」
それまで笑顔を浮かべていたケンがギクリと体を揺らす。
「はぁ?お前何者だよ?」
明らかに顔色が変わったケンに革ジャンの男が耳打ちする。
「おい、アイツさユリが言ってたヤツじゃないか?背の高い金髪だし、コイツの知り合いみたいだし…」
「なら丁度良い。ユリに、人の女に恥をかかせた礼をしてやるよ」
が意識を失ってなかったなら「怒りの矛先は風間さんじゃなくて彼に声をかけたアンタの彼女でしょ」とでも叫んでいただろうが、男達からの逆恨みに近い敵意を感じ取った風間の口の端が嬉しそうにつり上がる。
「く、くくく。人間が俺に喧嘩を売るか。いいぜ?来いよ」
挑発的な言葉にすぐにでも飛びかかってやりたいが、対峙する相手の刃物のような鋭利で冷たい眼差しにどういう訳か金縛りになってしまったように男達の身体は動かなくなっていた。
蛇に睨まれた蛙。どっと汗が吹き出してきて本能が危険信号を告げる。
「どうした?かかってこないのか?」
「くっ…」
風間の小馬鹿にした態度に苛立って以前に恐怖を感じて、お互いに目配せしていた男達の重苦しい時間は数分で終わった。
第三者が彼等の前に現れたからだ。