最近おかしな事ばかり続いている。
否、おかしいのは私自身か。
幕末だか明治時代だかからタイムスリップしてきた男の人と同居しているだけでも痛い話なのに、その男の人は鬼だという。
普通ならば「自分は鬼だ」とか言われたら、こいつ頭が可笑しいのかと笑い飛ばしてしまうだろうが、あいにくとその手の類が視えてしまう体質なため、彼の額には角が生えているのが視えるし異質な雰囲気も感じとれるのだ。
しかも今まで目立たないように生きてきたというのに、彼、風間さんは淡い金髪に赤目という目立つ色合いと見目麗しい外見のため彼はとても目立つ。
一緒に出掛けると目立つし、隣を歩くのが貧相な私ときたもんだから女の子達から逆恨みされるわで散々なのだ。
風間さんは女の子達から羨望の眼差しを送られようがシカトしているけど、私は注目を浴びるのが嫌で堪らない。
だってさ自分のレベルなんてわかっているから一緒にいるのがつらくなるのだ。
いくら何でも貧相な私が風間さんとは釣り合わないってわかっているのに影でコソコソ言われてて嫌になるから。
月子から世話を任されているから一緒にいるだけで、恋愛小説や漫画みたいな同居していて発展する展開なんて全く期待はしていない。
羨ましがって冷やかしてくる友人たちに言ってやりたい、
(この人は鬼で、私の事を女として見ていないんだぞっ!人のことを貴様とか言うし、それに顔は良いけど偉そうな俺様!ジャイアンだぞ!)
なんて心の中で叫んでみても虚しくなるだけ。
そんな状態なのに、酔っ払っていたとはいえ風間さんの前でゲロを撒き散らしてしまうという失態をしてしまうとは…穴があったら入りたい。
さらに落ち込み具合に追い討ちをかけたのは頭の中にお花が咲いた友人だった。
「ねぇ、この前来ていたイケメンって彼氏なの?」
「かっ…?違うよ。あの人は叔母さんの知り合いなんだよ」
「えーそうなの?学校まで来るしのこと待っていたみたいだからてっきり彼氏なのかと思ったけど」
同じ事を聞かれたのは彼女で何人目だろうか。女の子ってやっぱり恋バナが一番なのか。つい苦笑いをしてしまった。
「彼氏だなんて、あの人は私のことを女として見ていないし、私も男の人として見ていないもん」
学校に来たのはただの興味。そう言えば、何故だか胸がチクリと痛んだ。
逆に友人の表情は明るくなる。
「じゃああたしがアタックしても大丈夫よね〜」
「アタックかぁ…」
そう言えば風間さんは時々女の人に声をかけられているけど一度も誘いにのらない。
自分が一緒だからかもしれないけど、彼は人を卑下して見ている気がした。
でも、女から見ても小柄でお洒落で目がぱっちり二重の可愛らしくて話上手な彼女が風間さんにアタックしたらどうなるのだろうか?
考えたら少しだけ胸焼けみたいなもやもやした気分になった。