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01






 ィ















「いやぁぁぁー!!」


がばっ


「きゃあっ」


がんっ!


「いたた〜…」

「…っくぅ〜」

状況を解説すると…
叫びながら勢いよく上体を起こしたの頭と、を覗きこんでいた女の人の頭がゴッチンした。
目から火花が出るって本当なんだ・・・


「い…たたたた〜ちょっねぇ大丈夫ですか?」

半泣きで頭を抱えながらうずくまっている女の人に声をかける。
同い年くらいの茶髪で薄緑色の着物を着た女の人。足は裸足に草履を履いて…

うん?あれ…?
私って確か家に居なかった?

自分の服装は、自宅に居た時と同じユ●ク●のフリースカットソー、五本指ソックスが少し恥ずかしい…

ぐるーんと周りを見渡してみる…
薄曇りの空、地面には石がゴロゴロ転がって…少し放れて土手があって…


は広い河原に居た。











え?


「ぅえええ〜!?どこぉ〜!!??」


河原にの間抜けな絶叫が響きわたりました。






「ここは京の鴨川よ」

落ち着きを取り戻したは、まずは自分の状況を確認することにしたのだけど…

「かもがわ・・・・?」

なんで京都の鴨川にいるのだろう?
やっぱり自分はマンションから落ちて死んだのだろうか。これは死後の世界…鴨川っていうのは三途の川………?
どんより落ち込みまくっていると女性(きっと三途の川の渡し人)は、の格好を上から下まで物珍しそうに眺める。


「…変わった格好ね。あなたどこから来たの?どうしてここに寝ていたの?」

「…わかりません…」

三途の川てよくしらないけど、きっとここでお金取られて地獄か天国に連れて行かれるんだ………
寒さと不安からぎゅっと両腕で肩を抱えた。


「うーん?とりあえず…ここから離れない?ここでは落ち着かないだろうし、貴女疲れているでしょ?私の家で休んでいってもいいし、どうかしら?」

「はいっ…」

頷きかけて、は慌てて彼女に聞く。

「えっ!?…私のこと怪しいとか思わないのですか?」

怪しまないとは何てお人好しな人なんだろう。しかし、彼女はチラリとこちらを見て、

「だってこんなところに女子が一人でいたら危ないでしょ?」

にっこりと、思わず見惚れるような笑み。彼女の背中に天使の羽が見えた気がした。



「私は加奈というの。あなたの名前は?」

と申します」

「苗字を持っているということは…あなたはどこかの姫様?」

「姫?いえいえ私はそんな身分ではありません」

一応一般人なんだけど、と首を傾げつつ会話を続けた。
大きめな目がクリクリ動いて、全体的にかわいらしい印象の加奈さんは話しやすい。


「顔にかけている物は何?」

「これはですね、眼鏡という視力を矯正する物で…」


彼女の家まで並んで歩くうちに少しずつ会話にズレがあるような気がするけど…気のせいにすることにした。

しかし…



「…何時代ですか…ここ??」

川原を抜けると絶句した。目の前にある景色は何処の映画セットか…
鴨川沿いに面した大通りには、私が見知っている〔京都の町屋〕ではない。
もっと古い造りの木造平屋の建物が立ち並び、野菜・日用品・お団子など様々な物を売っている店や露天商が連なっていて、沢山の人で賑わっている。

もちろん道は剥き出しの土のままでコンクリートの舗装はされておらず、靴を履いていないの足はすでに傷だらけになっていた。
道行く人の服装から江戸時代では無い感じだし…水干を着ているってことは鎌倉? それとも平安?
ここは…もしかしたら知っている過去の時代ではないかもしれない… 周りの人たちが一人だけ違う服装のを好奇の目で見ているのがわかる。


(…見世物じゃ無いのだけど…うう…視線が痛い…)

「ひ〜目立つのコワイコワイ…」


俯きながら歩いていると、他のより大きめで生垣と木でできた簡素な門がある家の前で加奈さんが立ち止まった。
どうやらここが彼女の家らしい。








* * * * 





加奈さんのお母さんは優しそうな人で、突然お邪魔したを笑顔で家に上げてくれた。


「そうですか…」

の話しを聞き、複雑な顔をするお母さんと加奈さん。
いきなり「私どうやら未来からきました ここは何時代でしょうか」なんて言うわけにもいかず、
『なぜか無一文で川原で寝ていて、記憶があいまいになっている』という、ベタベタなことを話したのだ。


「どうして京に居るのか、ここがどこかもわからなくて、頼れる人もいなくて…どうしたらいいかわからなくて…つい、加奈さんの優しさに甘えてお邪魔してしまったんです…」

「女子の身でさぞやお困りでしょうね…。」

今にも泣きそうなを、本当に気の毒と思ってくれたらしい。演技力は自信あるし、まぁ演技でなくとも途方に暮れているのは本音だし…これからどうしたいいかわからないのが本音だった。


「…お母さん、うちに泊めてあげちゃダメなのかしら?」

やはり彼女は天使だったのだ。嘘っぱちな話にうっすら涙まで浮かべている。


「そうねぇ…女の子一人で外に出すなんて危ないし。」

お母さんはぽつりつぶやくとの顔を見て言う。


さん、記憶が戻るまで暫くうちにいるかい?最近腰を悪くしてね、ちょうど人手が足りないと思っていたから。こちらとしても仕事を手伝ってもらえるとありがたいし、腰が治るまでしばらく居てくれたら助かるのだけど…」

「…えっ」


しばらく居てくれたらって…?

「本当にいいんですか!? ありがとうございます!!」

(よかった・・・ これでしばらくの間はなんとかなる)

安堵から全身の力が抜け、お母さんに抱きついて泣いてしまった。


現代にいたときは、失恋で自棄酒して「どっか違う世界に行きたい!!」って思ったけど、実際違う世界に来てみると自分の元の生活が気になったしかたなくなる。
特に仕事のことが気になった。12月は定期試験もあるのに、研修もあるのに…これは教師生命の危機かもしれない!?

(…私、帰れるのかな?いったいこれからどうなるんだろ―…?)


この日はよほど疲れていたのか、用意してもらった寝床に横になった直後に眠った。
目が覚めたら元の世界に戻っていたら、いいのに―…


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