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膝まで川の水に浸かっているの姿を目の当たりにして、望美と九郎が声を荒げる。
「さんっ!?」
「おいっ!?何をやってるんだ!」
「ちがっ…何かに引っ張られて…きゃあぁっ!」
反論しようとしたら、完全に水の中に引っ張られてしまう。
「!!」
ヒノエがとっさにの手を掴もうとしたが…間に合わない。
ごぼっごぼごぼ……
水中では水が体に纏わりついてきて、意思どおりに体を動かすこともできない。
腕に巻き付いていた水とは違う何かが、体に巻きつくのだ。
(は、なしてっ)
叫ぼうとしても、口の中に水が入ってくるだけで余計に苦しい。
もがいて逃れようとするが、全く身動きが取れない。
だんだん苦しくなってきて、しだいには目を瞑った。
「殿…!」
遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、ぐいっと強い力で腕が引っ張られたした。
げほげほげほっ…
なんとか岸へ上がり、咳き込むの背中を朔が撫でてくれる。
「敦盛くん、ありがとう」
ようやく息が整いお礼を言うと、敦盛は視線を逸らした。
「いや…礼を言われるほどの事では…」
「何言ってるのっ礼を言うほどのことだよ。敦盛君がいなかったら、今頃私は怨霊に食べられていたのよ」
戸惑いの表情を浮かべる敦盛に九郎も頷きながらに続く。
「その通りだ。実は、何時敦盛殿が反旗を翻すか疑っていたのだが……今まで疑っていてすまなかった」
敦盛が初めて九郎達の前に現れた時、彼は平家の公達だからとなにか企んでいるのではないかと疑われていたのだ。
確かにその時九郎は敦盛を疑っていた。
だが、望美やの説得でそんな考えは持ってないと納得していたような気がしていたのに…彼はまだ疑っていたのか。
その後、一行は宿を取るために勝浦へと向う事になった。
あの場は退けることが出来たが、怪異を鎮めるにはやはりあの怨霊自体を封印しなくてはならない。
勝浦なら人も多いので、他の怪異や怨霊の情報も聞けるだろうとのこと。
そして、将臣君も勝浦に宿をとっているらしから、と嬉しそうに望美が言う。
白龍も、八葉がようやく揃うと喜んでいた。
勝浦…そうだ久々に加奈達に会いに行かなきゃ。
奈々に清房の事を伝えなければならない。
そしてゲームと同じ流れなら、この後は法王と一緒に居る怨霊と戦うはず。
望美がまだどんなルートを選択するか解らないけれど。
「さーん!早く行きましょうよ〜!」
思考の海に沈みかけていたが、望美の声で我に返った。
危ないまた迷子になってしまう。
「ごめんね」
今、思案しても結局は成るようにしかならない。
今までもそうだったなと、苦笑いを浮かべながらは皆の元へ走っていった。